■未来が見えてきた
高木善之氏が主宰する11月地球村通信の巻頭言「未来が見えてきた」の中の実験記事を読んで、「納得できたような、できないような」不思議な感覚になった。
いずれにしても、人間がテクノロジーを進化させ、自然を破壊し、我欲を増大させ、自己中心社会を拡大していることは事実である。
今回は、その記事内容を紹介したい。
自然界には無数の試練や困難があるが、人類は文明や科学の進歩で、それらを克服しようとしてきた。つまり自然の中で、不自然を追求してきたのだ。
便利快適という不自然を限りなく追求していくとどうなるのか。
1968年、アメリカの科学者(生物学者、動物行動学者)たちは、メリーランド州の豊かで広大な農村地域に理想的な環境を作って、大規模な実験を行った。そこには天敵はおらず、十分な食べ物と水があり、事前災害にも予防対策をした上で、オスメス16匹のマウスを放った。
★第1期「社会適応期」
マウスは新しい環境に戸惑い、そこに慣れるまで時間がかかったが、104日目に最初に出産がみられた。
※マウスの寿命は800日だから、人間の寿命を80歳とすると、マウスの10日は人間の一年、104日目は人間の10年目に当たる。
★第2期「社会形成期」
平均55日ごとに出産が繰り返され、マウスの数は倍々に増えていった。
食べ物は十分あるが、一緒に食べる群れが生まれ、群れの中に階級が生まれた。縄張りを持つボスと家来のグループと、広場で暮らすその他のグループに分かれた。
★第3期「停滞期」
広場で暮らすマウスは戦わず、争わず、動きが緩慢になり、オスはメス化しメスはオス化し、出産しても子育てできず死亡率が高くなった。縄張りで暮らすマウスは出産するが、そこからも縄張りを出て広場で暮らすマウスが増え、結果として出産が減り、全体の数が減り始めた。
★第4期「終末期」
マウスは2000匹をピークに減り始め、少子高齢化が進行する。
マウスの平均年齢が776日(人間なら77,6歳)に達した時、ついに出産がゼロとなり、200日後(人間なら20年後)マウスは絶滅した。

この実験「ユニバース25」は別名『楽園実験』と呼ばれ、「便利で快適を追求するとどうなるか」を知るためのもので、同様の実験が24回行われ、すべて絶滅した。
なぜ理想の楽園、究極の便利快適社会でマウスが絶滅したのか。
それは不自然だから。生きるための努力が必要ないから。生存本能、DNAが働かないから。
DNAには無数の機能や能力があり、必要に応じてスイッチが入るが、必要としなければスイッチは入らないのだろう。スイッチが入らなければ、生きようとする力も命をつなごう、子孫を残そうとすることもないのだろう。

日本はすでに第4期「終末期」に入っている。
世界一の「少子高齢化社会」であり「結婚できない、したくない」「子供はいらない、自身がない」という人が増えた。
世界でも、先進国で少子高齢化が進み、「環境破壊、世界の分断、核戦争」など破局に向かって突き進んでいる。現状の不自然の追求を止めなければ、破局は避けられない。
「UNIVERSE 25」のネズミ達と我々人類が違う点は、人類がネズミよりも遥かに高度なテクノロジーや文化を有しているという点である。これらをいかに活用出来るかが、我々がネズミの社会で起きた崩壊と同じ轍を踏まない為には重要になると思う。