●最近の習近平体制と中華思想
大陸国家の場合は、国と国の離合集散によって国境は頻繁に変わり、異民族の侵入を繰り返して民族が入り乱れるので、“ある時点の国”は特定できるが、“歴史を通じての国”はないと言っていいようです。従って何世紀にも股がる「○○国の歴史」を書くことはできません。600年以上の長期継続王室(国)は①日本(1500年以上)、②デンマーク(1000年)、③英国(950年)くらいしかありません。
中国はまさに長い歴史の中で、異民族政権が繰り返し王朝をつくっては崩壊する歴史を辿ってきました。

中国近代史を振り返ってみても、鄧小平の時代に中国発展のための方向づけ「改革開放(先進国に学ぶ)、韜光養晦(能ある鷹は爪を隠す)、集団指導体制(独裁は間違える)」、先富論(トリクルダウン)」を、その後の江沢民、胡錦濤まで守ってきたが、習近平体制になってから、徐々に方向替えを行い3期目体制では「中国の夢(中華思想)、戦狼外交(恫喝)、権力集中(習近平)、共同富裕(貧困一層)」に転換し、習近平独裁体制が強化されて全く異なる中国に変質しています。



最近、中国では「国恥地図」(明王朝時代の国土が最大だった時の地図)が採り上げられることが多いようです。国恥地図が作られた意図は、「失った領土を取り返さないのは国の恥」との意味がこもっているとのこと。
そしてつい最近、国恥地図をベースに加えた「中国が関係国との合意が取らないまま、勝手に領土・領海を明記した新しい地図」が公表されました。簡単にいうと「他国の了解を得ないまま、他国まで自国に組み入れた地図」です。

ASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳会議が5日にジャカルタで開幕し、中国が新たに発表した「領土・領海を明記した新しい地図」をめぐって、係争地を有するインドだけでなく、南シナ海で中国と領有権問題を抱えるASEAN加盟国(インド、フィリッピン、マレーシアなど)から反発の声があがりました。中国は「事実を記載した地図を出しただけ」と平然と答えていましたが、後ろめたさもなく不思議に思ってもいないようです。
この会議でも、中国側の一方的な主張で認められないとする立場を明確にしたうえで「南シナ海は平和的、合理的に話し合われるべきだ」と述べ、強い反発の声をあげました。中国側は既成事実をでっち上げることを画策しているのだと思います。
「習近平の中国」の考え方の原点にあるのは中華思想です。まさに先祖返りです。中華思想とは「自民族中心主義」のことで、漢王朝(BC206~220)の武帝が、国家統治に儒教や官僚制度を導入した頃に確立されたと言われています。
中国の皇帝が世界の中心にあり、世界のすべては中国皇帝の所有物(俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの)なのです。
習近平は3期目に入ってから、独裁権力基盤を強化して「全ては彼の一存で決まる」一強体制をつくりました。独裁者は万能感(イエスマンに囲まれた裸の王様)を強めがちで、今では毛沢東を超えて「新中国の皇帝(習近平王朝)」を目指しているかのように見えます。(側近は習近平に反論したら失脚するか暗殺されるとの恐怖感を持っているように感じます)ロシアと同じ恐怖政治です。

習近平の考える外交とは、相手を従わせる戦略(自国中心主義)しかなく、経済力・軍事力を強化することを前提に、相手との力関係を勘案しながら、国家間の交渉をする。(自国の国力が弱いと判断している時は、静かに時を待つ戦略をとる)
国家間の交渉とは、①説得、②威嚇、③小さな戦争(①②③は外交交渉の範疇)、それでも言うことを聞かなければ、④大きな勝てる戦争(最後の手段:負ける戦争はしない)を仕掛けることのようです。

民主主義国、特に日本の考える外交は「国と国が共存共栄するための平和外交」と考えており、相手を屈服させるための意識は持っていません。(もしかしたら日本だけかも?)そういえば欧米の植民地主義(帝国主義)も「資源の略奪」が主目的であり、日本の植民地主義(自国領土を広げ、自国民として教育や振興策に力点を置く)とチョット違うような気もします。
いずれにせよ日本は島国で、海に守られていたこともあり、 “和を持って尊しとす”をベースにした独特の日本精神を創り上げてきた気がします。