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ターニングポイント その6

    −ライフワークについて−
 
  近代社会は経済至上主義の考え方を前提に、いろんなしくみが造られてきて
 いるが、バブル崩壊後の社会はドラスチックな転換期に差し掛かっているように感じ
 ている。当たり前のことであるが、人間社会は多様な人集団で成り立っている。
 そして我々は、より豊かな人生を過ごすための望ましい社会づくりをやってきたはずで
 ある。ところが今、社会で発生している政治問題、企業不正問題、家族の変質に関し
 て報道される内容をみても、自己中心の姿勢に政治不信・企業不信・人間不信に繋
 がるものがあふれ出ている状況にある。また環境汚染の問題も深刻で、自然循環で
 成り立っていた地球環境が、諸々の環境破壊活動によりオゾン層が破壊され異常
 災害も多発するなど我々の子孫に住みにくい世の中を残すことになりそうである。

  モノが豊かになるに従い、日本社会のすばらしい面が消えていき、心が貧しくなってきているように感じ
 ざるを得ない。「自分がよければ・・・」というような自己中心的な考え方が、すべての面で蔓延している
 ことに因るのではないか。
 そして現代社会は、生活環境も含めて、人間が人間として生活しにくい世の中になりつつあることを、多くの
 人々が感じている。今まさに人々が明るい未来を描けなくなっており、この閉塞感を打破する新たな社会
 づくりが望まれてきている。
 
  このような社会環境の変化を感じる中で、仕事を通じての話に触れておきたい。
 バブル崩壊後に低成長が続く中で、大企業は人的リストラを行うが、中小企業はその受け皿となり得ない
 上に、学卒者の就職口が狭き門となり、失業者の多い社会となっている。最近では「ニート」と呼ばれる、
 働く意思のない若者たちも増え続けているようである。
 サラリーマンとして年功序列・終身雇用制度に乗れば生きていける時代は過ぎ去ってしまい、自分の力で
 食べていく人たちが多くなる世の中づくり、即ち自立化が求められる社会になってきているのではないか
 と思う。
 
  この10年間の地域中小企業支援の活動を通して、「情報が氾濫する一方で
 依存型社会が形成され、自立性に乏しい人たちがますます多くなってきている」
 なかで「21世紀の明るい日本社会に必要とされることは、自立性の高い人材を
 一人でも多く増やしていくこと」ではないかと痛切に感じるようになった。自立性が
 高い人材ということは、自己選択・自己決断・自己責任を取れる人材である。
 これを実現していくには、近視眼的な考え方で策を講じるのではなく、長期的観点
 から手を打っていくことが非常に大切である。
 そういう意味でも、子供の教育のあり方の見直しや、自己責任を求められる時代
 の社会インフラのあり方などに手をつけていく必要が出てくる。「実社会とリンク
 したキャリア教育」や、「図書館の情報収集拠点化」などは、その実現の切り口と
 して、望ましい活動になりうると考えている。従って、このような社会インフラの
 整備による「時間軸を加えた、地域社会のビジネス・インキュベーションシステムの
 構築」の重要性を強く感じている。

10年後

  このような状況下で、私は地域中小企業支援の活動を10年間行ってきたが、国が示して
 いる重点施策である「創業・経営革新の支援」に携わっていく中で、徐々に「地域のビジネス
 ・インキュベーション・システムの構築」を自分のライフワークとして考えるようになってきた。
 同じ志を持った方々との協創活動を進めていきたいと考えている。
 
 以上、6回にわたりこの5年間で培ってきた考え方を整理してみたが、これをもって「ターニングポイントを
 迎えての新たなスタート」としたい。