■トヨタとセブンイレブン
  
  トヨタ生産方式に関しては、私が台湾で仕事をしていた昭和50年代半ばに、台湾の日系企業の
 中から導入するところが出始めたところであったが、「下請けが親会社にジャストインタイムで納入する
 ために、在庫を持たざるを得ず、下請企業泣かせの仕組み」というような風評を聞いていた記憶があり、
 「現場社員の人間機械化、下請泣かせ」の仕組みという印象を持っていた。
  
  その後中小企業診断士を目指して勉強をする中で、トヨタ生産方式も時間をかけて
 学び始め、さらに診断士になってからも北九州市の中小企業診断士・山本博一先生から
 指導を受ける中で、トヨタ生産方式を知れば知るほどすばらしい仕組みであることを
 理解でき、それまでのイメージが180度変化した次第である。山本先生からも多くの
 関連書籍の紹介も受け、現在では合計10冊以上は保有している。
  
  2002年末に勝見明氏が書いた『〜「仮説」と「検証」で顧客の心を?む〜鈴木敏文の「統計心理学」』
 という本がプレジデント社から出版されている。2003年初に「統計心理学」というネーミングに興味を持
 って購入し、初めてセブンイレブン会長・鈴木敏文氏の考え方に触れたが、読めば読むほど
 「目からうろこ」の考え方に驚くことも多くあり、率直にいってトヨタ生産方式を少し突っ込んで勉強した
 時以来の知的衝撃を受けた。その後も緒方知行氏が書いた『鈴木敏文 商売の原点』や『鈴木敏文 商売
 の創造』なども読み、その考え方のすごさを、ますます感じている次第である。つい最近も、2005年1月末
 初版が発刊された『鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」』を早速購入して読みあげた。
 トヨタとセブンイレブン両社の経営スタイルを多面的に比較してみるに従い、改めてこの2社の重なる
 ところが目に付くように感じられ、一度整理しておきたいと思っており、今年度の目標の一つに掲げている。

 第2次大戦後の時代の変化を振り返ると、製造業では精糖、石炭、繊維産業などが
リーディングカンパニーだった時代から、電子機器、自動車などに移ってきており、最近は
IT、環境・福祉産業などに変わりつつある。流通サービス業も百貨店からスーパー、大型
店舗化などにシフトしていき、近年ではコンビニ業界などが売り上げトップになるなど、
製造業と同様に大きく変化してきている。ここ5年間での地方のスーパーやダイエーなどの
凋落ぶりは驚くばかりである。このような変化の中で、製造業でも流通業でも一貫して
評価され続けている企業としての代表格がトヨタとセブンイレブンということになる。
  
  この両社の強みは何なのかについて、いろいろ思い巡らしてきたが、最近感じているのは、トヨタ生産
 方式もセブンイレブン方式も多くの切り口からみて、非常に似通ったところが多いということである。
 詳細については別の機会に触れることにするが、今回は私なりに共通項を抽象化して整理してみた
 結果を記載して、当コラムの区切りとしておく。
 
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時代の変化への対応力に優れている(変わることのない基本と、変えていくことが必要なことを変えて
   いく遺伝子が組み込まれている)
 A ノウハウを全てオープンにする(他社が真似してモノになってきたときには、既に進化している自信が
   あるのでできること)
 B 一人ひとりが考えて仕事をするしくみ(アルバイトを含めた末端の人材までもが、改善力を発揮する
   仕組みづくりができている、人材育成に最も力を入れている)
 C 統計数字を過信しない(数字を鵜呑みにすることなく、多面的に検討することにより、数字の裏に隠れた
   真実を見出す努力を常に行っている、固定概念は捨てること)
 D 現場重視、実戦経験重視(現場のことは現場が一番分かる、現場に答が落ちている、机上の空論は
   何の価値もない、やってみてはじめてわかる)
 E 質の追求が量につながる(質を高める努力を行っていると、結果として量に繋がるが、その逆は絶対
   成り立たない)
 F ポジティブ思考、スピード重視、過ちは即修正(できない理由ではなくやる方法を考えよう、いいことは
   すぐやり悪いことはすぐやめる)