■フェイスブックの仮想通貨 リブラ(Libra)
6月半ばあたりから新聞掲載がされ始め、フェイスブック仮想通貨の「リブラ」に関するマスコミの扱いが急激に増加している。内容が具体的に分かり始めると、アッという間に多くの国家レベルでの重要課題にまでなってきた。
IMFがデジタル通貨に関する報告書をまとめ、特に「リブラ」については、G7の会合でも国際規制のあり方を議論されることになった。世界金融システムが機能不全になるという危機感が共有された感じでもある。
新聞記事やウェブなどからいろいろ調べてみると、さまざまな課題を抱えているものの、今までになかった可能性を秘めたイノベーティブなグローバル通貨のようである。


デジタル通貨の発行母体はリブラ協会で、結成するために集まった28の創設メンバーが運営することになっており、フェイスブックはその一員に過ぎないと強調している。
従来の金融システムのコアである銀行関係は一切入っていないのも何かを暗示するものがある。


先ずリブラの「3つの強み」と言われているものがある。
①決済スピードが速く、手数料が安い :決済スピードは銀行海外送金(1週間)、ビットコイン(7取引/秒)に対してリブラ(1000取引/秒)と100倍以上。手数料は銀行送金(少額国際送金でも数千円から。発展途上国の中には数10%もの手数料がかかる場合も。)に対して仮想通貨(0.1%程度)である。
②既存のフェイスブックユーザーが使えば一気に流通する :フェイスブックは24億人の月次アクティブユーザーを抱えており、そのユーザーたちがフェイスブックの各種サービス(フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー、WhatsApp)を使い
関連サービスも広がっていく。具体的な使途や協賛企業まで考え抜いた仮想通貨は、少なくともこれだけ壮大なスケールでは存在していない。
③価格が安定している
 :ビットコインなど他の仮想通貨は投機商品であるが、リブラはステーブルコイン(ドルなどの現在世界に流通している通貨バスケットに1:1でリンクされるもの)である。リブラのバスケットには「米ドル、円、ユーロ、英ポンド」(人民元は除外)で構成するようである。


もしもリブラが広く使われるようになれば、フェイスブックが個人の送金情報を握ることになる。このデータが適正に扱われるのか、リブラ批判派は懸念している。これに対してフェイスブックはウォレットなどを扱う会社「Calibra(カリブラ)」をスイスに設立し、フェイスブックがカリブラのデータを利用することはないとしている。


多数の国々からリブラに対する懸念が示されており、その中の日米3人の意見を紹介しておく。
*パウエルFRB議長 :リブラはプライバシーやマネーロンダリング(資金洗浄)、消費者保護、金融安定といった点で多くの深刻な懸念を引き起こしている。最高の規制対象とすべきだ。どのようなリスクがあるか徹底的な評価が必要だ。
*トランプ大統領 :社会の評価と信頼を得られないだろう。フェイスブックが銀行になりたいのなら、全ての銀行規制に従わなくてはならない。
*黒田日銀総裁 :支払い手段に使われれば、経済や金融に影響がある。国際的に協調して必要な対応を検討する。
上記以外にも、「インフレ・デフレ時の通貨調整」「商品購入時の税収」などについても懸念が示されている。

今から、どう展開していくのか分からないが、グローバル金融システムのイノベーション(創造的破壊)が起き始めるのかもしれない。
アマゾンも慎重に研究しているようなので、「リブラ」の今後の推移により、短時間で動き出すのかもしれません。アマゾンもウォッチ要!