■フィルターバブル

恥ずかしながら「フィルターバブル」という言葉とその意味を最近知ったが、「何となく感じている違和感が何なのか」に関してハッキリと認識できた。
インターネット活動家であるイーライ・パリサーが2011年に出版した同名の題の著書『The Filter Bubble』(邦訳は『閉じこもるインターネット』のタイトルで2012年に刊行)の中で作った新語だそうで、7年前から言われていた言葉だと知らずにいたことに、我ながら情報感度の低さを感じている。

「フィルターバブル」についてウェブ情報(ウィキペディア)で調べてみた。
フィルターバブル (filter bubble) とは、「インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなる。ユーザーは次第に自分の考えと対立する観点の情報に触れることができなくなり、自分自身の情報皮膜の中で知的孤立に陥るという

インターネットの検索サイトは、各ユーザーを識別する仕組み(ウェブビーコン)を用いて、各ユーザーの所在地、過去のクリック履歴、検索履歴などと言った、各ユーザーのプライベートな情報を把握している(この仕組みをトラッキングと言う)。そして、各ユーザーのプライベートな情報を、それぞれの検索サイトのアルゴリズムに基づいて解析し、そのユーザーが見たいだろうと思われる情報を選択的に推定して、ユーザーが見たくないだろうと思われる情報を遮断している(この仕組みをフィルタリングと言う)。そして各ユーザー毎に最適化された、各ユーザーが見たいだろうと思われる検索結果のみを返している(この仕組みをパーソナライズ、またはパーソナライゼーションと言う)。
GoogleやFacebookなど、ほとんどのwebサイトでは標準で導入されており、同じ「インターネット」を見ているつもりでも、人々が実際に見ているのはこのように「フィルター」を介してパーソナライズされた世界である。

自分の欲しい検索結果が返って来るようなアルゴリズムを持つwebサイトほど、良いwebサイトだとユーザーに評価されるので、各サイトの検索アルゴリズムはますます進化したが、一方で、検索サイトのアルゴリズムがますます進化して、ますます自分の欲しい検索結果が返って来るようになると、最終的には、自分の見たい情報(実際は、検索サイトのアルゴリズムがそう判断した情報)以外をインターネットで見ることが出来なくなる。そして、自分の観点に合わない情報から隔離され、同じ意見を持つ人々同士で群れ集まるようになり、それぞれの集団ごとで文化的・思想的な皮膜(バブル)の中に孤立するようになっていく。この現象を「フィルターバブル」と言う。


今、我々は便利さと引き換えに、グローバル・プラットフォームをつくった大企業に多面的な個人情報を気軽に提供し、それがビジネスに活用されているのが実態である。その結果、米国のGAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)、中国のBATH(Baidu,Alibaba,Tencent,Huawei)などがそれぞれ自社関連企業の経済圏をつくり、いつの間にかごく一部の企業群が独り勝ちするような社会が形成されてしまった。
別の観点からいうと、我々は今、情報操作が容易にできる社会の中で生きており、トランプとクリントンが争った米国大統領選挙や、イギリスのEU離脱国民投票など、国外からの情報操作も含めて、多大な影響を与えていることに、大いに危機感を持っている
「今の世は何が正しいかは分からないので、自分でベリファイ(検証)することが大切だ」と星アソの星崎さんから繰り返し話を聞いているが、それを克服するために多面的な情報収集の必要性を実感している。
そのような背景の下で、先日のG20でも、データ流通や電子商取引などのデジタル経済に関する国際的なルール作りを進めていくプロセス「大阪トラック」の立ち上げが宣言されたが、各国の利害対立を乗り越えて、具体化推進がされることに期待したい。