■出光佐三「日本人にかえれ」

  年末の欧州でのISテロの多発やトルコ・ロシア間の軋轢の深刻化が深まり、今年になっての中国株の下落に端を発した世界同時株安、欧米でのISテロの拡散、難民排斥の活発化、サウジアラビア(スンニ派)とイラン(シーア派)の報復合戦、加えて北朝鮮の水爆実験など、年初から不穏な情勢になっている。
そして長期的視点から見ても、社会情勢は国家・社会・経済・科学・文化・宗教・民族の観点から、いずれも全てバランスや仕組みが壊れ始め、混沌とした様相を呈している。まさに「行き詰まりの時代」が来ていることに、世界の多くの人々が強い不安感を持ち始めているのではないか。
 
 ロシアのクリミア併合・トルコ紛争、中国の民族同化政策・南沙諸島の埋立基地化など、国際ルールの軽視も現実に始まっている。国家財政の負債まみれやバーチャルマネーの実体経済飲み込み、富の2極化(極少数の富裕層と多数の貧民層)も深刻化しているように感じている。科学技術でも世界的生活レベルの向上による環境破壊や、人間の遺伝子操作の倫理的限界の不明確化などで、神の怒りを買うところまで来つつあるのではないだろうか。民族宗教問題でも、ISやテロの拡散により、欧米までがイスラム排斥などの極論に走り始めつつあり、大量難民発生による文明の衝突もますます多発する方向にある。
この地球的難局を乗り切るためには、何が必要なのだろうか?

 年末のテレビ放映「神の宿る島、沖ノ島」を見ていた時に、出光佐三氏の世界観の話を聞いて、現在の社会情勢がそのまま当てはまることに驚いた。
いろいろ調べたところ、出光佐三氏が46年前に書いた「日本人に帰れ」という本があった。まさに世界中の人々に、現代社会への警鐘を鳴らしているような内容であることが、下記内容の通り、より具体的に分かった。

「戦後、世界は交通の発達によって、一日で世界を回れるほど時間的に狭くなったことを、まず認識する必要がある。この狭い所に百以上の異民族が雑居しているのであるから、もはや権利思想や個人主義というような対立的思想では絶対にうまくいくはずがない。
 お互いに譲り、お互いに助ける互譲互助、和のあり方でなければならない。ところが権利思想の国では、譲るということが権利の放棄となり、邪道、卑屈、罪悪となるくらいに譲るということを絶対に理解できない。日本民族と外国人との根本的な違いである。
 そこで日本人がこの日本伝統の互譲互助、和の姿に一刻も早くたちかえり、対立闘争で行き詰っている世界に、平和と福祉のあり方を教えるのが、今日の日本人の世界的使命である。そして、その使命を担っているのが日本の青年である」


  「日本人にかえれ」とは、道徳の基本である「互譲互助の精神」と、忘れかけられている「感謝の心」と「恩を大切にする心」を取り戻すことをして欲しいとの意思表示であり、そうなることで日本人は「多文化融合と異文化の繋ぎ役」が果たせるのではないかと強く共感した次第である。
日本人のメンタリティーについては、漫画・アニメ文化の輸出と合わせ、20数年間をかけて世界の若者に深く浸透している。日本人が「日本人にかえる」ことで、世界が人間らしい社会に戻るのに、日本人が果たせる役割は多いのではないかと改めて感じている。