■ムヒカ元大統領のメッセージ

  先日のテレビで、ウルグアイのムヒカ元大統領の特集をやっており、話している一つ一つの言葉に引き込まれるとともに感動させられた。本質をついた考え方ができる素晴らしい人であり、その原点にウルグアイに移住してきた日本人から学んだことがあることを知り、更に身近に感じるようになった。
また「本当のリーダーとは、自分を超える人材を育てる人」との言葉にも強く共感をおぼえた。
彼に非常に興味を持ったのでウェブで調べてみたが、大統領時代は「大統領邸に住まず自宅から自分で車を運転し官邸に通っていた」「給料の9割を寄付し、1割で生活していた」など、他国では考えられない生活をしていたようである。また人類の未来に危機感を持ち、「人の生き方」「人の幸せ」を願って、今もウルグアイの次世代人材育成(子供に農業を教育)活動をしている素晴らしい人物だと分かり、心から尊敬の念を持った次第である。
マスコミでは、「世界で最も貧しい大統領」との呼び方が興味を引いているようであるが、どの国の政治家もが選挙のための建前として使っている「より多くの国民の幸せを目指す政治を実践した大統領」のほうが相応しいと実感した。




彼が2012年6月20日の「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」会場で行なった演説の邦訳文を読んでみたが、素晴らしいことが語られている。「持続可能な発展と世界の貧困をなくすために何をやるべきか」「無限の消費と発展を求める社会は目指す社会なのか?」「人類はこの消費社会(使い捨て社会)をコントロールせずにコントロールされていないだろうか?」「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ(ローマ帝国政治家セネカ)」「発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはならない。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきである。」などなど、核心をついた提言を行っている。
しかし弱小国の大統領ということもあり、会議での最後の演説者でもあったため、会場に残った人は殆どいなかったそうである。最も本質をついた話であったのにもかかわらず・・・
私に言わせれば、経済大国を含めて「持続可能な社会づくり」が必要になっている現実への危機感が全く無いとしか思えない。残念ながら本音の議論がされない会議からは、解決に繋がる方策は生まれないのは、当たり前のことである。

  テレビ放映の中で一番、身につまされたのは、「日本人は魂を失った」という言葉である。彼が言いたかったのは、「日本は経済至上主義では成功し、モノは豊かになったが、心は貧しくなっているのではないだろうか」ということだと感じた。
「足るを知る」「相互扶助」「武士道精神」「忍耐と努力」「謙譲の美徳」などなどが、その代償として売り払ったのではないかと言っているように感じた。

  日本の大人へのメッセージとしては、
君は日本を変えることはできない。でも、自分の考え方を変えることはできる。皆がそれを心がけると日本は変わるかもしれない。
と言っていた。
そして日本の子どもたちへのメッセージとして、
「日本の子どもたちよ。
君たちは今、人生で最も幸せな時間にいる
経済的に価値のある人材となるための勉強ばかりして、早く大人になろうと急がないで。
遊んで、遊んで、子供である幸せを味わっておくれ。
ゲームなどの射的心を煽る遊びではなく、自然の中で工夫しながら仲間と一緒に遊ぶことが、今、日本の子供に最も必要なことかもしれない。
オムロン創業者・立石一真氏の未来予測でいうと、現在の最適化社会から自律社会、自然社会へと、モノではなく、ココロを大切にする時代に向かうことが望まれる。