■エンデの遺言

 1昨日、久留米市城島町の比翼鶴酒造を訪問し、地域企業経営や未来のあり方に関する話をしている中で、「バーチャルマネーが実体経済をおかしくしている」「情報革命の急進展で、人工知能とビッグデータにより、人知では想定できないような株の売買がアメリカでは50%を占めるようになっており、富の偏在化とバーチャルマネーの更なる拡大が展開している」というような話をした。具体的にいうと、@0.5秒の間に1万回の売買をやるので、数社で売買件数の半数を占めるようになっていること。A過去20年間のビッグデータと人工知能を活用した売買で20〜30%の利益を上げていること。(他の取引総計で、−20〜−30%の損失が出ている。=一般投資家にしわ寄せ)と、様変わりしており、日本市場も同様な方向に向かっているような話をした。


 そのような話の流れの中で、児童文学作家/ミヒャエル・エンデが残した「エンデの遺言」に関する話が出た。かの有名なベストセラー本「MOMO」を書いた児童文学作家が残した「エンデの遺言」とは、どんなものか全くイメージできなかったが、地域での企業生き残り策として大切なことは「お金を地域でグルグル回すこと」というような話だった。
以前、私も「MOMO」の映画を見たことがあるが、単なる児童文学作家の童話だとばかり思っていた。そして女の子「MOMO」についても、変なというか非常に純真な女の子が、時間泥棒が支配するある地域にどこからか現れて、そこの人たちに徐々に影響をあたえて、時間泥棒を排除するような話だったとうっすら覚えている。
 
 エンデのことが非常に気になったので、あとでいろいろ調べてみたところ、「お金のあり方」ひいては「社会のあり方」に関する大切な指摘であることを知ることができ、今回、コラムに採り上げることにした。
エンデは、1995年8月に65歳で亡くなったが、死の前年1994年2月、自宅でのNHKとのインタービューの際に「新しい貨幣システム」を提案し、それが1999年に編集されたビデオ「エンデの遺言―――根源からお金を問うこと」となり、2014年6月に公開されたようである。下記URLで、動画を見ることができるので、興味のある人は是非、見ていただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=Hh3vfMXAPJQ
続けて「続エンデの遺言 坂本龍一銀行の未来」も放映されたようである。
https://www.youtube.com/watch?v=wPtV4KKhbeY
 最後に、「エンデの遺言」プロローグの部分を紹介しておきたい。 ミヒャエル・エンデ
現在、人々は本当の心の喜びや、心の豊かさを失っている。
環境問題・貧困・戦争、現在の精神の荒廃には、お金の問題が潜んでいる。
私が考えるのは、もう一度貨幣を実際になされた仕事や物の実体に対応する価値として位置付けるべきだということである。そのためには現在の貨幣システムが問題で、何を変えなくてはならないかを皆が真剣に考えなければならない。
この問題は、人類が、この惑星上で今後も生存できるかどうかを決める決定的な問いだと私は思っている。
重要なポイントは、例えばパン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、2つの全く異なった種類のお金であるという認識である。現在、お金には幾つかの異なった機能が与えられ、それが矛盾して問題を起こしている。
お金は、最初は「物や労働をやりとりする交換手段(機能)」として使われ始めた。 しかし、お金は「財産や資産の機能」を持っている。このお金は、溜め込まれ流通しないお金である。
更にお金には、銀行や株式市場を通じてやりとりされる「資本の機能」も与えられている。お金そのものが、商品や投機の対象となります。いくらでも印刷できる紙幣、更にはコンピューター上を駆け巡る数字となったお金は、実態の無いままに、世界を駆け巡っている。
現在の通貨は、全く違った機能を同時にもたされている。それが日々変動しながら世界をかけめぐり、生活や生産の場を混乱させている。

 私が薄々思っていたように、アンコントロールなものが、バーチャルマネーに加えて、ビッグデータが新たに出現していることに、危機感を感じている。
ニクソン・ショックで最後の砦・USドルの金本位制が崩れたところから、実体経済主導の社会がバーチャルマネーの増殖により犯されてしまったことが、マネーコントロールができなくなったキッカケである。お金だけが人工のものであるために、ただ置いているだけで減るどころか、無限の増殖をする仕組みの中で動いているために、成長社会が崩れたら成り立たなくなる経済社会となっている。
これと同様に、データのほうでもクラウド化、ビッグデータ化、SNSなどの進展で、情報の膨大化と消すことができない情報という問題が起きているが、これも自動消滅する仕組みを入れ込まない限り、お金と同様にアンコントロールで扱いかねることになるのではないかと危惧している。