■中小企業大学校人吉校

  3月17日は、中小企業大学校人吉校の登録研修指導員としての最後の統一登校日に登校し、
 その日の夕方には、校長はじめ研修指導室長、登録研修指導員仲間など、
 約20名の大学関係者による送別会を開いていただいた。
 私は平成13〜15年度の3年間を県立大学の立山教授の後釜として、
 生産管理担当ということで仕事をさせていただいた。
 当初は戸惑うことも結構あったが、3年間を振り返るといろいろ勉強になったことも多く、
 このような機会を与えていただいたことに、心より感謝している。
   
  中小企業大学校の設立目的は、
 南九州4県(熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)の「中小企業の経営者及び
 管理者の育成」である。
 その中で登録研修指導員の仕事は、
 @月1〜2回あるカリキュラム検討会議への参加、
 A受講生への助言指導の実施、
 Bコース担当としての交流会への参加などが主な仕事であった。
  (カリキュラム内容によっては当業務とは別に、講師をお願いされることもある)
   
  当校の研修指導員を卒業するに当たり、振り返って考えると、最も印象に残っていることは、
 カリキュラム検討に関してかもしれない。全体の研修体系と 個別カリキュラムの検討に際して、
 1年目は全体体系を余り考慮せずに個別カリキュラムの変更がなされており、体系の崩れが
 目立っていたように感じていた。
 ところが2年目からは校長が主導して、全体体系と個別カリキュラムの整合性を取るしくみづくりに
 力を入れた検討が2年間にわたり行われた。
 その結果「企業経営・財務・生産・販売・情報化・能力開発」×「実務基礎・実践応用・課題解決」の
 マトリックス編成の基に個別カリキュラムを検討していくパターンが確立し、また個別カリキュラムの
 基本台帳作成のベースづくりができたことになるが、これらのことは今後の継続的レベルアップを
 進める上では評価に値することであり、私もその基礎づくりの一員として参加できたことは、ありが
 たいことであった。
   
  また中小企業大学校のあり方として感じたことについて触れておく。一番難しいこととして、
 大学校のターゲット受講生と実際の受講生のギャップがある。
 ターゲット受講生は「経営者及び管理者」であるが、経営者向けの講座を除いた場合に、実際の
 受講生は「監督者や一般社員」の比率が結構高いことである。このことは以下の二つの問題を
 秘めている。
 一つは受講者のレベル差が大きく、管理者に照準を合わせると付いていけない人が出てくる
 ことである。これは社会人教育においては避けることのできない難しい現実的課題でもある。
 もう一つは監督者や一般社員にフィットするカリキュラムにすると、中小企業大学校の本来の目的に
 そぐわないことになりかねないことである。
   
  中小企業大学校のあり方について、別の角度からの課題として、ポリテクセンターとの競合状況が
 拡大していることがある。ポリテクセンターの講座が従来は失業者対象であったが、最近は企業向け
 監督者や一般社員向けの講座を拡大しているようである。
 一方で中小企業大学校も独立法人化を意識して、経営者や管理者だけでなく、枠を広げる方向に
 あるように感じる。経済産業省をバックにした中小企業大学校と、厚生労働省をバックにしたポリテク
 センターが、それぞれ受講生獲得のためのターゲット受講生を広げ、同じパイの奪い合いのような
 競合性が強まっていることがある。
 従来から存在する縦割り行政の矛盾を解決するためには、
 双方の「棲み分けの明確化」又は「一本化」が望まれる段階にきているのかもしれない。
  この仕事を卒業するにあたり、お世話になった中小企業大学校の校長、
 指導室長並びにスタッフの方々に感謝するとともに、当校の存在価値が
 高まっていくことを祈念する次第である。