■屋久島訪問C 紀元杉とヤクスギランド

 「屋久島には、日本列島が詰まっている」と言われるそうである。
屋久島には、九州で最高峰の宮之浦岳(標高1936m)がそびえており、この小さな島の中で、海岸から山頂まで2000m近い標高差となっている。
海岸あたりは珊瑚の海で熱帯魚が泳ぎ、里にはハイビスカスやブーゲンビリアが咲き誇る亜熱帯の気候である。しかし山頂付近では旭川あたりの気候と同じく平均気温が6、7度くらいで、冬には雪が降り宮之浦岳は雪景色となるとのこと。このような島は、他に類をみないのではないかと思う。

宮之浦岳

紀元杉

 白谷雲水峡をあとにして、宮之浦に戻り昼食兼土産物屋である屋久島観光センターに寄った。ここで一番、印象深かったことは、昼食に出た食器類が全て屋久杉製だったことである。食事に関することで最も感銘を受けたのは、食事そのものではなく、屋久杉の食器類だったといえるかもしれない。
食事と買物を終えて、安房から後ほど観光をするヤクスギランドを通過し、一路、「縄文杉」に次ぐナンバー2の屋久杉「紀元杉」のある場所に向かった。途中で野生猿にも遭遇したが、観光バスに驚くこともなく、自然体の猿の親子がおり、すぐ近くから写真を撮ることができた。また紀元杉に向かうバスの中からではあったが、山頂に天柱石という名の大岩が立っている太忠岳を眺めることができた。 
「紀元杉(胸高周囲8.1m、樹高19.5m)」は標高1230mのところにあり、縄文杉に次いで、2番目に有名な推定樹齢3000年の屋久杉である。このくらい古いものになると、「着生」という樹木の上に落ちた種子が芽を出して育つそうで、紀元杉には寄生植物とは異なる普通の異種植物が18種類も育っている。

天柱石(太中岳)

屋久杉の食器

切株更新

絞め殺し
 今回の屋久島観光で訪問した場所では、紀元杉の1230mが最も高い場所となった。紀元杉を後にしてヤクスギランドまで戻り、白谷雲水峡とは趣の異なる屋久杉が多い森林での散策を楽しんだ。
印象深かったことを上げておくと、先ず巨大な切株の上に大きな杉が数本生えている切株更新には、切株に屋久杉の実生が発生し、ここまで成長するのに、いかほどの年月が過ぎているのかを思うと、寿命100年もない人間の一生の短さを感じざるを得ず、非常に印象深い感覚を得ることができた。
次に「絞め殺しの木」に遭遇し、更なる衝撃を受けた。屋久杉に取り付いたヤマグルマの木が、生き残りをかけて勝負していた。杉が負けるのではないかとの印象を受けたが、ガイドに聞くところによると、ヤマグルマの寿命が杉に比べて非常に短いので、最終的には生き残るのは杉の方とのこと。
それから、名前からして記念写真を撮りたくなる仏陀杉(胸高周囲8.1m、樹高21.5m)は推定樹齢が1600年とのこと。大人が潜り抜けることができるような「くぐり杉」など様々な変形をした杉があったが、長年経つことで、石が落ちてしまったり、他の木が朽ち果てて無くなったりすることで、このような結果になるそうである。
ヤクスギランドでは、「草木同士や自然との数千年にわたる生存競争の厳しい姿」をマザマザと見せつけられ、体全体で「自然の中で生き抜く、生き切る」という感動を味わうことができた。


仏陀杉

くぐり杉

 
屋久鹿 キャサリン
最後に、観光ガイドから、「ヤクスギランドの入口付近に、屋久鹿のキャサリンが出没する。会えるとラッキーですよ。」との話を聞いたが、売店施設横の花壇の茂みに出てきており、写真を撮ることができたので、掲載しておく。