■ソーシャルメディア・マーケッティングA

 2013年に10年ぶりに来日し、「コトラーカンファレンス2013」が6月17日に開催され、社会の変化に対応した新たな発想を盛り込んでの話があった。当カンファレンスに関するウェブを確認する中で、事業構想大学院大学教授・江端浩人氏が、宣伝会議のコラムに書いておられ、分かり易い表現で記載されていたので、そのまま転記させていただく。

 コトラー氏は70年代80年代に日本は世界一のマーケターとして輝いていたが、それは良い製品を安く提供できていたというのが主な理由であったとしている。その中でも氏はエレクトロニクス、カメラ、自動車、バイク、時計、船、ピアノ、ジッパー、ラジオ、テレビ、ビデオ、計算機などを日本の強さとして挙げていた。しかしご存知のように現在の日本はそのような状況とは異なっているのであるが、その要因は以下にあるとしている。
1. 国内市場への依存度が高い
2. One P (Promotion) 依存でCMOが不在
3. 商品開発にマーケティング視点が入っていない
4. 経営上の判断が遅い
5. 終身雇用制度と年功序列制度
6. 株式市場を意識した短期経営目線

筆者が特に注目したいのは2番目のポイントである。皆さんもご存じだろうが、4Pとはアメリカのマーケティング学者であるエドモンド・ジェローム・マッカーシーが1960年に提唱した有名な分類Product(製品)、Price(価格)、Promotion(販売促進)、Place(流通)のマーケティングミックスことである。確かに現在日本でマーケティングを語るときにはPromotionの話が多く、製品のスペックや価格体系、流通経路などにマーケティング部門がかかわることは少ないのではないだろうか?
米国ではマーケティングの4PにCMOが入り込んで全社の戦略に貢献しているということである。今までのように良い製品を安く作るだけでは勝てない中で、コトラー教授は日本企業に経営の担い手の一人としてCMOの役割を創るように提唱しているのである。

 この状況を打開して成長のためのレシピとしてコトラー教授は以下を挙げている。
1. 製品、ビジネスモデル、流通、コミュニケーション、価格のイノベーション
2. アイデアの共創およびクラウドソーシング
3. マスからソーシャルメディアへのシフト
4. 戦略的マーケティングの担い手としてCMOを登用せよ
5. 製品ではなくて顧客のことを考えよ
6. ブランドの存在意義を明確化せよ
この中で筆者が特に注目するのが、3の部分でコトラー教授が説明に使っていたたとえである。教授はソーシャルメディアなど新しいメディアがどんどん台頭しているときは「予算の10%を実験用に確保して新しい試みに回すべき」としている。またコトラー教授の予想ではこれからは顧客関与度の高い、ハイタッチメディアが有効なはずあり、したがって2030年にはマーケティング費用の50%がソーシャルメディアに回るということであった。いずれにせよ1960年代にマーケティングの教科書的な書物を書いた人物が現代においてもメディアの発達とその本質についてここまで言及できるということは頭の下がる思いである。 

 次回は、日経新聞の「私の履歴書」に記載された中で、興味がある事柄に加えて、最近のコトラーが考えていることに触れてみたいと思う。