■ネット依存の深刻化

 IDCジャパンの2013年10月の調査によると、日本でのクライアント端末別の普及率が、スマートフォン49.8%、タブレット端末20.1%、PC97.0%になっているとのこと。スマートフォンについては、10〜20歳代では76.3%で、携帯電話の66.9%を既に逆転しているようである。
先日、NHKテレビのアサイチを見ていたら、ネット依存の問題についての話があり、問題意識を持っていることもあり、真剣に見ることとなった。
現在の日本でのネット依存症の実態は、表面化しているだけで50万人と言われているようで、現実では10倍以上になっているのではないかと思った次第である。

 歩きながら、自転車に乗りながら、また電車に乗ってスマホを操作している人が、いつでもどこでも多く見かける。家庭の中でも、帰ってきたらスマホ、テレビをつけてスマホ、食事中もスマホ、風呂でもスマホ、寝ながらスマホなどで、家庭内のコミュニケーションがなくなっている家庭も多いように聞く。
別な番組で、2歳や3歳の子供がうるさい時にはスマホでアニメを見せると、おとなしくなるので、すぐスマホを与えて、自分の他にやらなければいけないことをやるようにしているとか、子供をホッタラカシにしてスマホに夢中になっている母親の映像も流れていた。

 企業でも、隣にいる人とメールで会話、仕事中にスマホ、食事の時もスマホ、休憩時間もスマホなどが急増しており、家庭同様に社員間のコミュニケーションがなくなっているような話もあった。
スマホを止めガラ携に切り替えたら、毎月5千円の手当を支給する中小企業が紹介されており、殆どが会社にスマホを持ち込まないようになり、社内のコミュニケーションが多くなり、仕事に好影響を与えている話が紹介されていた。

 依存症の種類として、大きく二つに分けられており、@動画やゲーム、ネット通販などの「コンテンツ依存」、Aラインやツイッター、フェイスブックなどのSNS・つながり依存があるようである。
いずれも、軽い気持ちからいつの間にかハマってしまうようになる人が多いようであるが、その背景にあるものがある。リアル社会においては、学校や職場での「いじめ」や「セクハラ」「パワハラ」など大変なことも多くあり、「リアル社会からの逃避」もあるようである。

 ネット依存症は急激に増加しているものの、依存症対応に取り組んでいる病院は数少ないようである。
先日は、その数少ない病院の一つである久里浜医療センターが紹介されていた。
http://www.kurihama-med.jp/tiar/
そこの医師の話では、「ネット依存症は、薬物依存やアルコール依存よりも深刻であると実感している。」とのことであった。

 久里浜医療センター・ネット依存治療研究部門(TIAR)の紹介文を記載しておく。
 近年のインターネットの普及、およびそのサービスの発展はいちじるしく、わが国でもインターネット嗜癖(本治療研究部門では一般的な「ネット依存」という用語を使います)におちいる人々の増加がけねんされています。我々の2008年の調査によると、20歳以上でネット依存が疑われる者は全国で270万人にのぼることが推計されました。となりの韓国や中国では長時間連続してオンラインゲームを利用して死亡する事故も起きており、大きな社会問題になっています。アメリカでもインターネットに長時間をついやすことから離婚や解雇など深刻な問題が起きており、その治療に注目が集まっています。しかし、わが国ではネット依存の治療に専門的に取り組んでいる施設はまだありません。このため、当院では、長年の依存症治療でつちかった専門性をもとに、2011年7月よりネット依存治療研究部門(TIAR)を開設し治療を開始しました。当センターでは、ネット依存治療を行うとともに、ネット依存に関する研究と最新の治療情報収集にも取り組み、よりよい治療を提供してまいります。