■「五味」の話

 味について、今までの世界標準は「四味」だったが、最近「旨味(うまみ)」が国際的に認められ、「五味」が世界標準になったと、少し前のNHKのTVで見たことがある。「旨い(旨味)」は、日本では昔から大切にしていた味覚であるが、世界では認められていなかった味であることに驚き、少し調べてみた。
人間の感じる味は、「酸っぱい(酸味)」「苦い(苦味)」「甘い(甘味)」「塩辛い(塩味)」と言われており、「辛い(辛味)」は味覚ではなく痛覚によるもので、辛味の成分が口の中の粘膜を刺激したものだとのこと。また「渋い(渋味)」も触覚と痛覚が絡み合った感覚だそうである。
 「旨い(旨味)」は池田菊苗が1908年に発見したが、昆布や
 野菜などに含まれるグルタミン酸、鰹節などに含まれるイノシン
 酸、シイタケなどに含まれるグアニル酸などがあり、英語でも
 「umami」という。
 このグルタミン酸とイノシン酸またはグアニル酸を一緒に使うと
 相乗効果で7倍もの旨味を感じるそうで、料理の際にこれらが
 入るようにすると、よりおいしい料理になる。

 一昨年、米国のマイアミ大学で、この旨味を感じる受容体を
 舌にある味雷(みらい)の中に発見したという発表がなされ
 これで旨味が第五の味覚として、明確に認知されたことになる。
 ところで、何故、日本人が旨味を発見したかというと、日本人は
 外国人に比して、味雷の数が多く、微妙な味に敏感だからと
 言われている。
 現在では、味覚センサーという装置が開発され、食品会社
 での商品開発や品質管理にも利用されている。

 安心・安全に加えて、健康食ブームが世界に広がっているが、日本食の店も世界各国で急増しており、今や、標準的な世界食になりつつある。日本食は、多様で豊富な旬の食材や食品、栄養バランスの取れた食事構成、食事と年中行事や人生儀礼との密接な結びつきなどといった特徴を持つ素晴らしい食文化があり、諸外国からも高い評価を受けている。
日本食文化を「和食;日本人の伝統的な食文化」と題して、ユネスコ無形文化遺産への登録申請が平成二四年三月になされており、平成二五年一二月に審査結果が発表されるようである。既に、フランス美食術、地中海料理、メキシコ、トルコの伝統料理といった食文化が社会的慣習として登録されているが、日本食文化も認可される可能性が高いようである。