■中国の一面を見る
  
  先日のテレビで、中国の小さな女の子とひき逃げ事件が報道され、監視カメラで捉え
 られた一部始終が映し出されたが、そこに現代中国の一面が見えており、怖さに震える
 とともに、心が痛む内容であった。
 何しろ公衆の面前でひき逃げ事件が起きているのに、周りにいる人びとは、あたかも
 何もないように通り過ぎるだけ。おまけにその女の子は、再度、ひき逃げされる状況と
 なった。それでも、誰も気付かぬ振りして通り過ぎるだけ。19人目の人が、ようやく
 女の子を助けて病院に運ばれたが、結局、助からなかったそうである。
 メディアの取材に際しても「見なかった」「気づかなかった」と弁明をしたり、「怖かった
 ので逃げた」と述べたりしていたとのこと。「他人事に関わって、面倒に巻き込まれる
 のはごめんだ」の一言に尽きるのが中国人のホンネのようである。
   犯人は捕まったそうであるが、「ひき殺した場合は1500ドル払えば済む話だが、生きていたら最低でも
 その10倍の金額を支払わなければいけない。」と答えているそうで、払う罰金が勿体なくて2回ひいた
 とのこと。女の子を助けたおばさんも、報奨金が出るような話が起きると、「報奨金目当てに助けたのだ。」
 というような誹謗中傷が一斉に起き、報奨金も辞退して、心を痛めて田舎に身を隠したそうである。
 まさに今の中国は「善意が仇に返される」社会になったわけである。
 「この報酬金目当てで自作自演が横行するのでは」というネットユーザーの意見も飛び交っており、「もし、
 被害者が大人だったら、被害者のバッグや指輪、財布などを奪い合う通行人の姿が映し出されただろう」
 との話もあった。
    天安門事件の時のリーダーの一人に石平氏という日本に帰化した中国人がいるが、
彼が語っていることに「子供時代、『誰にも言わないこと』と、きつく言われた上で、
お祖父さんから短文の教育を受けた。何回も書かされて、すぐ焼き捨てるように指導
された。文化大革命の時代で、論語教育をしていることがわかったら下放されたり
殺されたりすることだったことが後でわかった。」「長年の密告制度が、中国人の相互扶助・相互信頼の精神を破壊した。(親を密告した子供が英雄化されるなど)」などと話している。
中国で最も自慢できる儒教や道教による道徳教育が、社会道徳を維持してきたわけだが、文化大革命により道徳教育の原点が完全に破壊されてしまった。
その時代に青春時代を送った人々が親となり、現在はその親に教育を受けた子供
たちが社会の中堅となっている。
だからこそ、今の中国には“見義勇為”を含む倫理観が欠如しているのであり、道徳教育を通じて人々に相互扶助の精神を植えつけることが必要なのである。考えてもみてほしい、上述した“見義不為、無勇也義(義を見てせざるは勇なきなり)”は『論語・為政編』の言葉である。