■新たな気付きB :若者が夢を描ける社会を
 多くのことを考えて書こうとしたために、まとまりのないコラムになってしまった感があるが、このまま出すことをお許し願いたい。
入院中にNHKテレビで、幅広い年代の参加者による討論番組があったが、最近の若者の考え方に触れ、改めて感じたことがある。



 若者の価値感や考え方を事前調査された番組提示情報や、若者の発言を聞いていると、我々、団塊世代の若い時とは価値感や考え方が大きく異なっており、何となく違和感を感じながら番組を見ていた。
 例えば、「車には興味ない、偉くなりたくない(重責はいや)、海外に行きたくない」という若者が増えており、仕事の「やり甲斐や生き甲斐」の話は少なく、これは最近の若者は、自分の将来への夢や希望を持てないでいるのではないかと感じた。またパート・アルバイトや契約社員の発言だが、「その時々に生活できるレベルの収入があれば満足」という発言についても、理解しがたい考えである。というのは仕事スキルの向上や仕事範囲の拡大がない限り、年齢を重ねても給料が上がらないだろうし、結婚した場合や失業のリスクへの対応として「預貯金の確保」が必要だし、自分の将来のことを真剣に考えなくていいのだろうかと心配になる。
 
 一方で携帯やパソコンの活用に関しては、朝起きて寝るまで携帯を手元において、携帯メールをコミュニケーション・ツールとして活用し、情報収集だけでなく通販をうまく利用するなど、多岐に渡って有効活用しているようである。情報収集力が非常に高くなっている反面、知識重視に偏りがちで、「知識は豊富だが経験はない。」傾向もあるように感じた。
 
 話が進んでいく中で、若者の心の裏にあるものが見えてきた。それは「人間関係への不安」と「将来への不安」の二つである。
 先ず、「人間関係への不安」についてであるが、小さい頃から「知らない人から声をかけられたら、ついて行かずに逃げなさい」などと、知らない人への警戒感を強く持つ教育を受け、学校でのいじめの経験から「付かず離れず、表面的な付き合いが自分を守ること」と知らない人との接触に消極的になっているようである。それに加えて、人の上に立つべき政治家や経営者などが「平然と嘘をつく、約束を守らない」実態をテレビ・新聞で見続けていることで、更に潜在的にも人間不信の意識が強まり、心の通わない表面的な人間関係づくりが自分を守ることと考えているのかもしれない。
本当は「心を割って話せる人が欲しい」と思いながらも、それができないで孤独感を強く持つというジレンマを感じているのではないかと感じた。

 多くの出会いを経験すること、人との縁を得ることで、自分の生き方が豊かになるだけでなく、お互いに助け合うこともできるわけであるが、最近の若者は「人とかかわらないことが、自分を守ること」と勘違いをして、自分の世界を小さくしているようである。
その結果、「社会の中の自分」というスタンスで自己客観視することができずに、「自分の中の社会」という自己中心の世界に入り込んでいる人が多いのかもしれない。
 
 次に「将来への不安」については、今は社会が大きく変わろうとしている時代にあることもあり、先行きが見えにくくなっていることからきているのだろう。現在、発生している種々の現象を考えると、将来への不安という中には、「地域コミュニティの崩壊、雇用の不安定化、地球環境の破壊」の顕在化などが含まれていると思う。
 地域コミュニティの崩壊に関しては、「核家族化、商店街の壊滅、若者の都会流出による急速な高齢化、大型マンションや大型店舗の普及」などが、持続可能なコミュニティを壊す結果となっている。現在抱えている問題を解決するために、昔の社会に後戻りすることはできないわけで、我々はそれらに代わる新たな仕組みをつくっていくことが必要となるであろう。
 例えば、高齢者と若者が交流する場として、「子育て主婦と高齢女性の交流の場」や「若者起業家と企業OB人材の交流の場」などを設けることで、断絶している世代間の信頼と絆を取り戻せるのではないかと考えた。


 
 雇用の不安定化に関しては、「正規社員比率の低下、企業経営の不安定要素の多様化、ものづくりの海外シフト、高学歴な若者の増加(大卒のレベルダウン)」などが関係しているように思う。人は、営業に向く人、商品開発に向く人、製造に向く人、農業に向く人など、多種多様である。ところが、ものづくり立国だった日本で、製造現場で働くのが好きな人たちの働く場は海外移転で大きく減少している。また食糧自給率の低下に従い、農林漁業に向く人材も働く場が小さくなっている。今の日本では、不向きな仕事に従事している人が大幅に増えて、仕事と人材のミスマッチが拡大しており、ニートやフリーター、ウツになる人などが増加している要因なのかもしれない。
 食料自給率の低い日本では、農林漁業は将来の成長産業であり、失業対策などに関しても、一時的な臨時雇用を増やすのではなく、農林漁業への若者のシフトなどに力を入れるべきではないかと思っている。
 
 地球環境の破壊に関しては、「国境を越えての生態系の破壊、地球温暖化、自然災害・異常気象の頻発、資源リサイクルの停滞」などが関係している。異常気象や地震の多発、産業廃棄物の拡大なども顕在化しており、このまま推移していくと地球破滅に繋がるのではないかと心配にならざるを得ない。更に中国やインドなど人口大国の急激な経済発展は、これらを更に加速させることになるであろう。一方では、これらの事象は心配することはないという意見もあるが・・・
 いずれにしても、これらを見直していくには、地球全体のこれ以上の経済発展を抑制することが必要ではないかと考えられる。
先進国の生活レベルダウン(我慢して生活レベルを下げる)による後進国の生活レベルアップ抑制などが望まれるが、実現はなかなか困難であると思われる。
 
 今はまさに明治維新、終戦に次ぐパラダイムシフトが起きつつあり、我々は明るい未来づくりに向けて、「効率至上主義や金銭至上主義」の自己中心社会から脱却して、「多様性を寛容する共存共栄主義」の共同体社会に大きく変わるための過渡期を迎えていると考えたい。
 そして日本の将来を担う若者達が、未来を信じて、夢や希望を語ることができるような地域コミュニティの再構築を図り、若者達に残してやれるようにしたいものである。私がライフワークとして活動している起業家や後継者の「相互研鑽の場づくり」もその一環として位置付けられるものだと確信している。