■バイオ編A
  捨てられているものにも価値がある
環境問題に対する意識はあれど、ゴミを無くしてしまうというゼロ・エミッションは難しいもの。(有)にゅうとん倶楽部(長野県上田市)は、この課題に挑戦している。
福澤社長は40年以上、青果卸売り会社に勤務した後、起業した、いわばシニアベンチャーだ。
以前の会社では1日1トンの玉ねぎの皮を年間900万円かけて廃棄していた。処理方法を考えている中でバクテリアで消滅させようとしたが、玉ねぎの皮だと逆にバクテリアの方が死滅してしまった。「もしかしたら、大変な殺菌力があるのではないか」とひらめき、会社を設立し、玉ねぎの皮を土壌の活性化に活用しようとした。しかし、悪臭がひどく、含んだ水分で余計に汚染してしまった。
そこで、実験を繰り返し特殊な高速乾燥システムを考え出し、粉末にしてみた。すると悩みの種だった土壌の連作障害がなくなり、水田に活用すると3割程度収穫量が増えた。専門家から「そんなはずはない」と言われる度に実験データを見せてきた。だから、専門機関の実証実験・分析は欠かせない。
家畜への応用では、豚の生育がよく、鶏は卵を18%多く産み、卵のビタミンEは8%多いことが分かった。肉の試食モニター調査では保水性、弾力性などで優れていることも分かった。

最後は食用。驚いたことに皮には食用白身部分(通常食している部分)と比較して亜鉛26倍、カルシウム103倍、鉄分86倍など多く含まれていた。カレーや味噌汁に入れるとこくが出て味もいい。「これはいけるのでは?」5年前に広告を一切せず、スーパーで発売したところ20日間で2,700個売れた。予想の4倍だった。

とにかく実験を繰り返して、数字を示し、理解者を増やしてきた。平成17年3月には食品界のレコード大賞といわれる安藤百福賞ベンチャー部門優秀賞を受賞した。
全体の22%に当たる玉ねぎの皮、捨てられてきたものに価値を与える挑戦。従業員3名の企業は躍動している。