■精密機械編@
  安全へのこだわりを自社ブランドで貫く
2004年10月の新潟中越自身。大惨事を引き起こしたが、ガス爆発はゼロだったことが当時、話題となった。
これは大地震による揺れを瞬時に感知しガスの燃焼をストップさせた「感震器」のお陰でもあろう、ということは多くの専門家の一致するところであった。都市ガス用マイコンメーターに安全装置として組込まれている、あの感震器である。これを製造しているのが歴史のある中小企業であり、この製品で国内90%の圧倒的シェアを持っていることは案外知られていない。
生方製作所(名古屋市)は、「安全と独創」にこだわる自主独立集団である。2007年に創業50周年を迎えたが、この路線は一貫して変わらない。マーケティングから開発、設計、生産、検査、アフタケアまですべて自社の手で行っている。
加えて生産設備も自社製造しており、創業以来の自主独立に賭ける信念は工場の隅々にまで浸透しているといえる。中小企業には珍しく、すべての製品に自社ブランドマークを付け、責任の明確化と自身のほどを対外的にアピールしている。
冒頭の感震器も同社の優れた技術から生まれたもので、従来の感震器は工事の振動など地震以外の揺れにも反応したケースがあったが、そうした不具合は全くないのが特色だ。感震器以外にもうひとつ、国内シェア90%の製品がある。
エアコンの制御などに使われるバイメタルスイッチである。一定以上の異常な熱や電圧がかかると、電気をカットする役割を果たす。異種金属の薄板を組み合わせた構造で、カーエアコン、新幹線のエアコンなど需要がどんどん拡大している。

一つの中小企業にシェア90%の自社ブランド製品が2つもあるというのは驚異的なことだ。傍目には、これにターゲットを絞っていけば経営の現状維持程度は可能ではないかとも思える。しかもその製品は脱フロンガスなど環境がらみ、おまけに低コストであり、今後の普及には必然性がある。ただし、一般論だが、そこで本当に現状維持に留まってしまえば企業は先細りとなるのは多くの先例をみても明らかだ。もちろん同社にとってこういった考えはさらさらなく、安全と安心に貢献するために片時も歩みを鈍らせる気はない。
現在、国内外に特許を約900件保有する。この独自の技術力を生かし次の飛躍を目指すのは創業以来の同社のDNAである。すでに「小さな大企業」の感すらある同社の次なる標的は一般住宅用の煙と地震両用タイプの感知器。初の一般消費者向け製品で、開発に数年をかけ、まさに「社運を賭けた」(生方会長)戦略製品。安全を安心を徹底志向する進路に寸分の狂いもないと言える。