■肥後象嵌
   今までに肥後象嵌で作ったプレゼントを何人かの方々に送っている。
  その時には、有名な肥後象嵌の店で、熊本城の絵板やペーパーナイフなど
  店に置いてあるサンプルの中から製品を選び出し、それに相手の名前を象嵌で入れてもらった。
  肥後象嵌は、そんなやり方で頼むものとばかり思っていた。
   ところが最近、創業ベンチャー国民フォーラムの起業支援家部門・会長賞を受賞したため、
  祝いの品として肥後象嵌のネクタイピンをいただいた。
  ベンチャーの英文字をデザイン化したイニシャル入りのもので、
  1枚メッセージが付いており、その中には送り主が私に対して、
  どのような気持ちを込めて作ったものかが書いてあり、気持ちのこもり具合を嬉しく思った次第である。
   このたび、ここ3年ほど仕事でお世話になった方が熊本を離れることとなり、
  長く記憶に残るものを送りたいと考えて、そのネクタイピンを作った店に行ってみた。
  この店は閉まっていることも多いようで、ようやく3回目の訪問で店主に会って話すことができた。
  「先日、知人からこの店で作った肥後象嵌のネクタイピンをプレゼント受けた。
  心のこもり具合を嬉しく思い、私がお世話になった方にこの店で作った肥後象嵌の品をプレゼント
  したいと思っている。」などを話したところ、店主も喜んでくれ最初から親しみを感じての対応であった。
   「私がなぜその人にプレゼントを送ろうとするのか」
  「その人と私の関係がどんなものか」
  「その人はどんな人か」
  なども話した後、予算額を明示し、いろんなやり取りの結果、
  「いい材質で出来たペーパーナイフにすること」
  「その方の名前を絵の中に組み込むこと」などが決まった。
  その後は「肥後・細川藩の参勤交代」「肥後もっこすの語源」
  「おじいさんが作った虎の象嵌」「細川家・家宝となっている刀のつばの象嵌」
  「半導体研磨技術」など次から次へと話が弾み、いつの間にか2時間以上の長話をしていた。
  その後ファックスでのやり取りなども行い、2週間ほどたってから、
  「アイデアを固めつつあるので、会って話をしたい」とのことで、早速出かけて行き話をした。
  材料の手配とデザインの検討でだいぶ時間を使ったようで、
  その辺の話を中心に1時間ほど最終打合わせをして、現在は製作にかかってもらっている。 
   そこの店主は、いろいろなことへのこだわりも強く、
  話しているうちに単なる職人ではなく職人芸術家だということがだんだん分かってきた。
  「肥後象嵌を作る人」と一口に言っても、職人芸術家から職人、
  そして加工屋さんまでいることを改めて知った次第である。
  もう仕上がる予定になっているが、「できた段階で、自分から連絡する」との話を受けているので、
  連絡をもらうまで静かに待っているところである。
  その老舗の店は岡本金鉱堂といい、仁王さん通りの広町寄りにある。