■ご縁を大切に E
 平成16年の11月に九州経済産業局の方から電話があり、熊本のオフィスに伺いたいとのこと。翌日に来ていただいた時、「次年度から新連携事業が始まるが、それに向けて今から準備を始めるので手伝って欲しい」と思いもしていない話にビックリしてしまった。その当時は、くまもとテクノ産業財団のリージョンIM活動をしていたときだったので、九経局のほうから熊本県と財団の了解をとっていただいた上で、役目を引き受けることにした。

 その時の九州新連携の準備メンバーは、九経局の方に加えて、我々民間人が3人の構成であった。一人は県支援センターのPM仲間でもあった長崎の杉岡さん、もう一方が元三井物産九州支社長、現イーバンク副社長である星崎さんであった。星崎さんとの出会いは、私自身にとっては昭和56年末の平田機工・平田会長との出会い以来の「今まで会ったことのない凄い人」との出会いとなる。
 初会合の時に感じた出会いの感触は回を重ねるごとに深まり、大きな刺激を受けながら仕事ができるというワクワク感が増していったことを憶えている。
 星崎さんは、シッカリしたコンセプトメーキングができ、幅広い分野・業界に関する知識・経験・感性を有しており、現場が大好きなマーケッティング・センスの豊かな方である。また正義感の強い、人情味に溢れた方であり、この出会いには心から感謝している。「わが道を行く」的なところが結構強いが、それが憎めないのも人徳なのであろう。この縁をつくっていただいた九経局の田中さん、倉光さんには心から感謝している。

 平成17年4月から新連携事業が発足し、初代の非常に個性豊かなチームメンバーが構成された。前述の星崎統括PM、杉岡PMと私に加え、西日本シティ銀行の中園PM、三井物産出身の廣田PM、カシオ出身の西村PM、九州VPの水口PM、それに事務方として九経局から出向の福嶋補佐、渡邊さん、女性スタッフ・福澤さんの総勢10名体制となった。最初からのメンバーで今でも残っているのは、女性スタッフの福澤さんと私の二人だけとなっている。モデル事業段階からの話になれば、九経局も含めて私だけとなってしまった。いつの間にか私は、九州新連携の歴史を知る唯一の人材となったわけである。
 新連携も4年目の半ばを過ぎてしまったことに、「光陰矢のごとし」を改めて感じているところである。
 昨年度まで3年間で九州新連携の認定件数は39件あり、そのうち私が認定までフォローした案件が9件、認定に深くタッチした案件が4件あり、合わせると全体の3分の1となる。認定へのブラッシュアップ、認定後のフォローアップを通して、認定事業の各コア企業社長や担当者とも突っ込んだ支援を行うことで親しくなることができた。その分それぞれの企業への「思い」も強く持っており、それぞれがいい事業に育っていくことを祈念するとともに、事業の推移状況は気になるものである。
 新連携事業の仕事を通して得た様々な経験や縁は、一言ではいえない貴重なものとなっている。熊本から熊本を見る視点が、九州から熊本を見る視点に変わっただけでも、全く違うものがある。もともとから国の目線で中小企業施策を見ていたつもりではあるが、県の目線から国の目線で長期間見続けることにより、得られるものかもしれない。金融機関との付き合い方、VCとの付き合い方、企業倒産に纏わること、一貫した事業計画のあり方など、経験に裏打ちされた企業支援の幅と深さが大きく広がったように実感している。

 新連携PMの3年目に、体調を崩してしまったことは、私の人生の中でも大きな出来事であったが、多くの新しい縁を得ることで、克服することができつつある。もともと健康には自信があっただけに、若い頃のつもりで気力・体力を振り絞っていても、心身総体が対応しきれないという事実を知ることとなった。しかし今年に入ってから徐々に回復し、気にならない程度まで回復することが出来た。人間とは不思議なもので、「よくなりたい心」を持ち続けることで、現代医学では直せないものも、自分自身の中に回復力を有していることを実感した次第である。

 「ご縁を大切に」のコラムも、残すはライフワークに関することとなり、これに関して次回に触れることで、区切りにしたいと考えている。