■手塚治虫の火の鳥A

 前回のコラムに書いたとおり、火の鳥の概要を理解するために、NHK放映されたアニメのDVD版を見たが、ここに全体概要を紹介しておく。なお、この詳細内容を知りたい場合は、下記のURLを参照にしていただきたい。

http://www.avexmovie.jp/lineup/hinotori/index.html

 

★黎明編は4部構成になっており、3世紀頃の火の鳥の住む火の山を舞台にした物語である。

 ヤマタイ国の女王・ヒミコは、忍び寄る老いにおびえ、火の鳥の生き血を欲していた。そこで軍隊に火の鳥を捕まえるように命令を出し、火の鳥の住む火の山の麓にあった村を急襲し皆殺しをする。(村人の少数は生き残り物語も展開していく。)火の山が火を噴くなか、火の鳥を求めて山を登り、弓の名手が火の鳥を仕留めるが、ヒミコは生き血を飲むこともないまま命を落とす。その後にヤマタイ国を滅ぼそうとする騎馬の民との戦いに敗れ、ヤマタイ国は滅んでしまう。一方、火山の爆発で深い縦穴の中に閉じこめられた村人夫婦が子供を産み、大きくなったその子供が縦穴からの脱出に成功し、新たな旅立ちをするところで終わる。

 

★復活編は2部構成になっており、25世紀の世界で「人間とロボットと命のあり方」の物語である。

 
 月面の研究施設の爆発に巻き込まれたレオナは人工頭脳の埋め込み手術によって蘇生する。しかし、爆発以前の記憶をなくし、さらには人間が奇妙な生物に見え、女性の形をしたロボット・チヒロが人間の女性に見えるようになっているが、本人にはそのことが分からない。人間たち(奇妙な生物)から逃げ出すために、レオナとチヒロは手を取り合って医療施設を抜け出し、無意識のうちに研究施設の爆発跡地にたどり着く。そしてレオナは研究施設で次第に過去を取り戻していくが、自分がしていた仕事が、「火の鳥」 の羽の生命力の研究だったことを思い出す。レオナをかばって機能を停止するチヒロに対して、死にたくても死ぬことのできない体になったレオナが残ってしまうところで終わる。

 

異形編は1部構成であり、16世紀の日本の戦国時代を舞台に不思議な輪廻転生の物語である。

 男として育てられた左近介は、非道の父の病気を治そうとする八百比丘尼を殺すために寺のある山にでかける。寺で八百比丘尼を斬った後、帰ろうとしても堂々巡りして山から下りることができなくなった左近介は、仕方なく寺に戻る。左近介は時間と空間の輪の中に閉じこめられてしまったのだ。左近介は、なるがまま寺を訪れる人・動物・妖怪の命を分け隔てなく救う生活を始める。そのような繰り返しの中で、八百比丘尼が未来の自分自身であることを知る。いずれ来る、自分自身に斬られる未来を見据えながら、覚悟を決めて生活をし、遂にその日を迎えるというところで終わる。

 
★太陽編は4部構成になっており、7世紀の飛鳥時代の神・仏に関わる朝廷闘争の物語である。

 敗戦の将・ハリマは顔に狼の毛皮をかぶせられ外せなくなる。ハリマは倭の国に渡り、そこで土地神である狗族の娘・マリモを助けるところから始まる。歳月は流れ、ハリマは犬上の里の郷長・犬神となり、里は栄え平和な生活が続いていたが、土地神を廃し仏教を広めようという朝廷の圧力や画策が、徐々に強くなっていく。朝廷内においても仏教を広める天地天皇に対し、土地神を擁護する天智大王の弟・大海人皇子との間でも軋轢が起こり始める。天智大王の崩御により、政局は大きく動き出し、大友皇子の軍勢と大海人皇子、犬上らの軍勢との戦いが始まる。大友皇子軍は仏法を用い超常的な力で犬上らを攻撃してくるが、マリモら狗族をはじめとする土地神たちが犬上側に加勢。なんとか犬上は仏法を用いる僧を倒し、大海人皇子の軍は勝利する。しかし、権力を手にした大海人皇子は、国家統一のために仏教を擁護する立場に変わっていく。

 

★未来編は2部構成になっており、35世紀以降の人類滅亡から人類再生までの物語である。

 人類が地上に住めなくなり、地下都市に住む時代となっている。人の脳に直接、快感を与える生物・ムーピーは、どの家庭でも飼われていたが、徐々に人類に悪影響を与えることとなり、法的に所有を禁じられる生物に指定される。そのムーピー・タマミを愛してしまったマサトは、タマミと地下都市ヤマトから脱出。地上で隠遁生活を送る人工生命の権威・猿田博士のもとにたどり着く。しばらくして世界各地の地下都市間の全面戦争が起こり、人類は地上の3人を残して滅亡してしまう。火の鳥により死ねない体になっていたマサトと、生命力の強いムーピーのタマミを残し、残りの人類も死んでしまう。しかし、やがてタマミも寿命を迎え、マサトはとうとう世界でただ一人になってしまう。死ぬ事もできずに人工生命の研究を続け、何とか生命を作り出そうとするがうまくいかない。5000年のコールドスリープについていた女性にも会うことができない。 永遠の孤独にさいなまれるマサト。長い年月が過ぎ、あるきっかけで新しい生命が生まれる。地球の進化に沿って、単細胞生物から始まり、数十万年の後に人類の出現を見ることとなる。